心に歓喜あふれ|親鸞会

寝たきりになっても

紅葉の写真:親鸞会 会員の声

「真実に遇うということは、例えようもなく、幸せなことです。六字の御名号にグルグル巻きにされて、抱き抱えられた不思議さは、何とも言われません。もったいない、ただもったいないだけです」

 大竹千代さん(90)の口からは、法悦の言葉があふれ出る。3年前から寝たきりになったが、聞法の心意気は、健康な学徒に少しも劣るものではない。

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 妙好人・赤尾の道宗ゆかりの地、五箇山に生まれた大竹さんは、約20年前、長男を交通事故で失った。悲嘆に暮れていた時、ある人から紹介され、高森先生と巡り会う。

「死んだらお助け」の寺の説教は、本当の親鸞聖人のみ教えではないと知らされて、火のつくような聞法が始まった。南砺市での法話に欠かさず参詣、京都や神戸の先生のご法話にも駆けつけた。家族の仏縁を念じて家庭法話を開き、親鸞会講師の河内清美さん(仮名)と知り合ったのは平成8年のことである。

 5年前、心筋梗塞で倒れ、入院を余儀なくされた。ある時、見舞いに来た河内さんに懇願した。

「仏法聞きたい」
 河内さんは、

「そうね……気持ちは分かるけれど、ここは4人部屋だし、デッキもないの。残念だけど、退院してからね」。

 すると大竹さんは、その言葉を遮るように、真剣なまなざしで訴えた。

「私の後生はどうなるの!今聞かなくて、いつ聞くんや」

 かける言葉も見つからなかった。

 だが、大竹さんの快復は目覚ましく、わずか3カ月で退院。聴聞したい一心で治療に専念し、心でいつも『正信偈』をあげていたという。
 念願の自宅ご法話の再開を喜ぶ一方、次第に歩行が困難になり、2年後には寝たきりとなった。全身に走る激痛で、
「うー……」と低くうめき声を漏らす時もある。

「でも、聴聞が始まった途端に、ピタッと止まるんです」

と、驚く河内さんを横目に、「この道一筋に生かしてもらわなきゃならんと思っとったから、苦しいと思うことなんてなかったですよ」と大竹さんは、ほほえむ。

    ■

「私ほどの幸せ者はない」
 大竹さんの口癖だ。
 娘の由美子さんは最初、当てつけで言っているのかと思った。しかし、河内さんと明るく語らう様子に、何か尊い空気を感ぜずにいられなかった。
「体が不自由でも、こんなに喜べる世界があるのか」と心動かされた。

「母があんなに明るいのは、親鸞会のおかげかなって思います。それに母から、『これは、遺言だと思って聞いてほしい。後生は一人一人のしのぎ。いちばん大事なことだから、どうか仏法聞いてくれ』と、いつも言われてきたんです」と、由美子さんは語っている。

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