孤高のプログラマー|親鸞会

18歳 世界を驚かせた新理論

親鸞会 特集

18歳にしてカナダでひらかれた国際学会にデビュー。大学に通う坂口篤志さん(仮名)は、高校時代に立ち上げたコンピューター関連会社の監査役も務める異才である。

「プログラマーとしての技術は、インターネットと併用していろいろなことに生かせます。親鸞聖人のみ教えは、どれだけ宣伝しても過ぎることはないので、積極的に発信できるシステムを構築したいと思っているんです」



「皆がやらないことにチャレンジしたい」。高校時代のモットーだった。生徒会、ボランティア、資格試験の勉強、プログラミング、それらを生かして会社を設立するなど、忙しく飛び回った。中でも、とりこになったのは、「プログラミングソフトの研究」である。
高校1年の9月、教室のコンピューターに入っていた数式処理ソフトウェアを使って大規模な計算を繰り返してみた。
すると、計算結果に、ある場合にのみ「規則性」が現れることに気づいた。分析して数学科の先生に報告したところ、「これは……。なぜこんな結果が出たのか、先生も分からない。もっと掘り下げて追究してみなさい」と勧められた。
「何桁まで計算できるのか知りたくて調べたことが、意外にも評価されて驚きました」

その後、テーマを絞って研究を重ねた。
授業が終わるとすぐコンピューター室へ駆け込む。夜遅くまで画面に向かった。帰宅後も結果を読み取り翌日に備える。睡眠は4、5時間。昼食はパンをかじって5分で済ませ、寸暇を惜しみ没頭した。
10台のコンピューターを数日間動かし続け、膨大なデータを算出。それらをまとめるのに更に数週間かけ、やがて、
「9999999999999999999999の99乗」
の計算結果から、各ケタに出現する数字の中で、0と9が異常に多いことを見つけて、総合的に解析していった。
高校3年生の2月、ようやく論文が仕上がり、大規模な数値計算に関する新たな仮説を立証した。
カナダでの国際学会あてに提出、最初の発見から2年半が過ぎていた。

大学院で研究するようなテーマにすでに着手していた坂口さんは、その知識が認められ、推薦入試で大学に合格。その春、先輩から親鸞聖人のみ教えを聞いた。

「なぜ生きる。人生の目的があるから、聞いてみないか」
〈これは、以前聞いたことのあるお話だ……〉

高校1年の時、学校の図書館近くで声をかけられ、数回、講演会に参加したことがある。しかし研究で慌ただしく足が遠のいていた。「また聞いてみよう」と思ったものの、今度は仕事に追われ、仏法に向かえぬまま月日が流れた。

カナダの国際学会へ

6月、高校時代の恩師が弾む声で電話してきた。

「おい、すごいぞ。きみのあの論文が認められて、夏に開かれるカナダの国際学会で発表することになったよ」

思わず耳を疑った。

〈えっ、あの世界最大の学会に?ボクが?〉

家族や友人に、電話で伝えるうちに、じわじわと実感がわいてきた。
初めての海外。機内にパソコンを持ち込み、発表論文をまとめる。前の晩はホテルで練習を繰り返した。
当日、会場に入ると、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、フィリピンから、大学教授や企業の研究員らが訪れていた。廊下で擦れ違う人が皆、珍しそうに、18歳の坂口さんをジロジロと眺める。

そして本番。
プログラムを起動させながら約1時間、英語でスピーチし、質問にも英語で答えた。
終了後、一斉に拍手喝采の嵐となる。
「どうして高校生でそこまで本格的な研究ができたのか」
「数学の知識がそれほどなくても、そんな研究テーマを見つけ出せたのはなぜか」など、会場から次々と称賛の声。
フィリピンの高校教師は、「私の学校でも、生徒が自主的に課題を見つけるようにしたいので、ぜひ参考にしたい」
と言い、フランスの大学教授からは、「パリの論文誌に、きみの研究発表を載せたい」という申し出があった。

〈やった……〉

ホテルに戻ってからも、耳の奥で拍手の音が鳴りやまなかった。


「満足」というゴール

成田に到着すると、日本はうだるような暑さだった。
一人暮らしの8畳1間のアパートに戻れば、無理矢理、現実に引き戻される。仕事の苦情メールの処理や、山積みになった大学の課題に囲まれた。研究に集中していた時にはなかったむなしさが、ふっと込み上げる。
達成感はあるものの、もう平凡な研究はできないというプレッシャー、急に評価されなくなるかもしれないという不安、この先どこへ向かえばよいか分からぬ焦りやらで、心は入り乱れる。

〈この先、どこまでいっても満足というゴールはないのか〉

帰国後まもなく、親鸞会の学生たちが集う勉強会に参加した。
テーマは、釈迦の説かれた「人間の実相」の譬え話である。いつ切れるとも知れぬ「藤蔓」に捕まる「旅人」の足下には、底知れぬ「深海」が広がる。絶体絶命のピンチにありながら、旅人は、滴り落ちる「蜂蜜」をなめることのみに心奪われている。

〈研究による称賛も、会社の利益も皆、蜂蜜なんだろうな〉

そう思うと、旅人の愚かさが、自分と重なった。ああ、二度も仏法を聞くチャンスを頂きながら耳を傾けようとせず、名利を求めることに翻弄されていた。
限りある命で限りない欲を満たそうと、もがいていた私はまさに、あの旅人だ。2600年前、お釈迦さまが教えられたとおりだった----。
勉強会の終わりに、「親鸞学徒となって聞かせていただきたい」と先輩に告げた。



翌年9月、経営している会社が、株式会社になった。それを機に坂口さんは、「少しでも聞法に適した環境を」と、自ら社長職を退き、監査役となった。専門のプログラム研究に加え、一日300通のメールを処理し、会計監査、業務監査、サーバー監視、決定事項の承認などを行う。
「プログラマーの仕事は孤独で、エネルギーが要ります。
ここまで働いて生きるのは何のためかと悩んでいる人も多い。仕事や研究で知り合う人はたくさんいますので、彼らにも、生きる意味を知って働く幸せを伝えていきたいですね」

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