人生の目的に今遇えた|親鸞会

人生の目的に 今 遇えた

生きる意味を求める旅に出た滝下和美さん(仮名)は、2カ月かけて中東や欧州を回ったが、期待どおりの感動が得られず、失望の連続だった。これ以上旅しても何も変わらないと結論を出し、帰国を決意した。

写真 フランスの風景:親鸞会特集


平成12年9月、パリのシャルルド・ド・ゴール空港から日本へたった。こうなることは予感していた気もする。これからの道は二つしかない。哲学と向き合い、人生の目的はないと証明して自ら命を絶つか、あるいは、屍のようにだくだくと生きて死を待つか。成田上空に近づくと、飛行機は高度を下げ始めた。ああ、いよいよ現実に引き戻される。旅で最も嫌な瞬間だった。

茨城の実家に戻った。荷物を片付ける気力もなく、ベッドに横たわり、ただ天井を見つめて物思いにふけった。

芥川龍之介や太宰治のことを考えた。特に芥川の『藪の中』と『袈裟と盛遠』が好きだった。鋭い洞察と切れ味のよい文章で人間の醜さを表現するところに引かれた。二人とも自殺している。文学を創造するために自己を見つめるほど、生の滑稽さや悲惨さを知ってしまったのだろう。

自分も彼らと同じ道をたどるのか。苦しい。図書館にでも行けば、「生きる目的を探すことが目的」といった程度の話で心を落ち着かせることができるかもしれない。とにかく、この部屋を出なければ。

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