広がる遺弟の夢|親鸞会 会員の声

 「浄土真宗の繁昌は遺弟の念力により成ず」(蓮如上人)
 親鸞聖人の教えを学ぶ若者たちは、夢に向かって輝いている。

夢は世界を駆けめぐる

29歳 男性

「世界中に、映像を通して仏法を伝えるのが夢です」

安田貢さん(仮名)は、大学院でコンピューター・グラフィックス(CG)の基礎理論を研究する。「視覚のみならず、聴覚や触覚も刺激しながら、分かりやすく物事を伝える技術を身につけたい」。身ぶり手ぶりで快活に語る。

 映像で仏法を伝えることに関心を抱くようになったのは、親鸞聖人の映画の英語版や『王舎城の悲劇』を見た海外の法友が、

「映像なら毎日仏法を聞くことができます」

「釈尊を自宅にご招待しているみたい」

と喜ぶ声を聞いたときだった。同じころ、CGを駆使して最新の医学情報を解説するNHKの特集番組「驚異の小宇宙人体」を見て感銘を受けていた。

「学術的なことでも人を感動させる力がある。みんなが幸せになれる仏法を伝えるのにこそ、映像の技術を生かしたいと思ったのです」

 中学・高校時代は空手道場に通ったが、剛健さとは裏腹に、毎夜、不安に襲われたという。「胸に手を当てると、心臓は規則正しく動いている。しかし今にでも止まってしまえば……」

 死ねば無になるのか、何か残るのか。幼いころからの疑問の答えを求め、脳を研究しようと大学へ進んだ平成7年、親鸞聖人のみ教えと出会った。

「『信受本願 前念命終 即得往生 後念即生』※
のお言葉に驚嘆しました。すべての心理現象は脳で説明できると信じていましたが、そうではなかったんですね」

 たいへん深い仏教の教えを一人でも多くに伝えたいと、脳科学の道からは離れ、今では映像制作の夢に向かう充実した毎日だ。

※「愚禿鈔」のお言葉

阿弥陀仏の本願に救いとられた体験をいわれたお言葉。
人生不安の根元である「後生暗い心」が死んだ時(前念命終)、「救われたことの不思議さよ」と「後生明るい心」が生まれる(後念即生)。「心の、臨終と誕生の同時体験」させられる時、と言われている。



オーストラリアの友に再び

24歳 女性

「子供たちに『生きる力』を与えるはずの教師自身が、人生に希望がなく、疲れている」

 私立高校で英語を教えている太田和恵さん(仮名)は、同僚のため息を聞くたびに、そう感じる。

 赴任前に思い描いた職員室と現実とはギャップがあった。自己を磨こうと勉強する人は少なく、目の前のことをこなせばいいという雰囲気がただよう。一方、生徒たちは何か情熱を持って打ち込めるものはないか探している。

 そんな姿に接していると、「因果の道理」の話をせずにおれなくなる。「ある生徒は、『今苦しいのは自分に原因があるのだと知り、他人を恨む心がなくなり、楽になった』と、感想を書いてきました」

オーストラリア シドニー
オーストラリア/シドニー

 教師の仕事に定時はない。「自殺や引きこもり、ニートなど、苦しむ若者が多いのも、根本は生きる目的が分からないからだと思います」

 7月に2週間、語学研修でオーストラリアに行った。現地の学生の中には、日本に深い関心を寄せている人も少なくない。

「日本人は自国で真実の仏法が説かれていることに誇りを持って、世界の人に大いに紹介すべきと思います」

 ホームステイ先の家族にも、「人生の目的はある」と伝えたが、英語でうまく表現できず、もどかしい思いをした。「もっと英会話のスキルアップをして、英語でも生きる意味を伝えられる教師になりたい。オーストラリアには、また必ず行きたいです」と歯切れよく夢を語っている。



信念のスケジュール管理

20代 男性

「製品を作る過程で出た不良品の原因を解明しています」

 製品工場の技術課に勤務する鈴木琢磨さん(仮名)は、実験に追われる毎日だ。不良品を出さないために必要なデータを期限までにそろえなければ、会社に何千万という損害を与えかねない。その重責を果たすため、連日、夜の12時、1時まで残業が続く。

花

 仏法と仕事の両立を実践するには、スケジュール管理が難しい。1カ月前から綿密な業務計画を立てている。実験にかかる時間の見通しが立てにくく、「ギリギリの状況になることもよくあります。でも『光に向かって』の気持ちがあれば、いろんな困難も乗り越えられるものですよ」と恬淡と語った。

 研究室にこもってばかりではいけないと、職場では自分から話しかけるよう心がけている。「『因果の道理』などを話すと、続きを聞きたがる人も多いんです。

 不良品を出さないようにするには、なぜ不良品ができたか、その原因を正しく知らなければなりませんからね。その原因を取り除くことで、必ず結果は変わる。まさに因果の道理そのものなんです」と、自信を持って語る。

月2回、同僚たちと開いている研究会も、「いずれは本当の幸福を伝えるご縁に」と心ひそかに念じ、夢に向かって進んでいる。



空の船頭はおまかせ

28歳 男性

「パイロットにもいろんな人があります」。空港の航空管制官を務める茨木良弘さん(仮名 28歳)は言う。

「早く着陸したい」と順番を考えずに要求してきたり、小型機でのんきに割り込んでくるアマチュア操縦士もいる。言い分をすべて聞いていたら大混乱になる。

 管制官はそんな空の交通整理を行う。時速900キロ、秒速250メートルで飛び交う旅客機の位置や高度の全体像を把握し、的確に誘導する。空の安全の監視役である。

 その分、プレッシャーも大きい。「初めのころは緊張で、声は震え、頭は真っ白でした。わずかな精神状態の違いも判断に影響するし、誤れば大惨事ですから」

 ひとたびレーダーの前に座ったならば、「他人の意見に流されず、自分を信じて決断します」と言い切る。支えになったのが、高森顕徹先生の著書にある、「殿さまの命令に従わなかった船頭」の話である。

「船頭がいったん舵を握れば、何人の指図も受けてはならぬ。たとえ身命を失うとも、己の信念どおりに船をあやつるのが船頭じゃ」。時折、読み返す一節だ。

 毎日レーダーに向かっていると、映しだされたデータが実際に飛行中のものと思えなくなり、安全を忘れ、ゲーム感覚で危険を冒しそうになる同僚もある。「人命の尊さを知らねば、そうなってしまう。人の命を預かる者として、自戒せずにおれません」

 平成9年、大学で仏法と出会った。卒業後、郷里で就職したが、空の仕事がしたいと管制官受験を決意した。合格者は100人中2人という難関を平成13年に突破し、半年の研修後、初めて配属されたのが現在の任地だった。

「本当の命の重さを知らされているから、管制官の仕事も責任を持ってがんばれる。心に光があるから毎日元気です」。自信をもって語っている。

空港
空港

ブラジルにも仏法を

「友達、親戚、道で出会った人も皆、お誘いしたい」

 ジュリオ・オリベイラさん(仮名)は、自身が通うブラジルの大学で、毎月、仏法の会合を開催している。みんなの幸せを願う情熱はとても強い。5月に結婚した妻や落慶法要で体験発表した法友に、仏法を伝えたのも彼だった。「地元の人たちに仏法を伝えるのが夢なんです」

 かつては家族の不和に苦しみ、生きる目的を探し続けた。人生の目的があることを教えられた親鸞聖人の教えが、地球の反対側の、日本語の分からぬ自分にまで届いたことに驚く。「無上仏(阿弥陀如来のこと)が私の心を見抜いていらっしゃったとしか思えません」

 親鸞聖人の教えをもっと深く理解したいと、昨年から勉強に取り組んでいる。目下の課題は漢字の習得だ。「覚えても、覚えても、問題が先へ進むと前のを忘れてしまいます」と苦笑い。だが仏教の勉強を始めて日本語も上達した。「通訳なしで高森顕徹先生のご説法を、日本語で直接お聞きできるようになりたい」

 大学院の物理学科では、電子の「スピン」という特性を利用する最先端技術、スピントロニクスを研究する。最優秀成績者として、大学から表彰もされた。



感謝と協力 明るい家庭に

 学生時代から共に仏法を聞いてきたおしどり夫婦。森田康平さん(仮名)と郁美さん(仮名)は結婚当初から、自宅で毎月、ご法話を開いている。「家庭法話を開きやすい間取りの物件を選びました」と郁美さん。出産の際、一時中断をしていたが、「みんなに仏法を聞いていただく尊いご縁だから続けたかった」と出産後も、育児との両立に悩みながらも、再開を決めた。「夜の家庭法話の準備は子供をあやしながら、午前中から始めます。たいへんですが、臨む心構えができますね」

花

 仕事を終えて駆けつける法友も多い。「そんな人のために、おにぎりをたくさん作っておきます。終了後はみんな喜びで話が尽きないんですよ」

 康平さんは大学の法学部を卒業し、法律事務所に勤務して5年めになる。依頼者から最初に話を聞くのが、事務員の重要な任務の一つ。

 50件以上の依頼者を担当し、頭が混乱しそうになることもあるが、

「仕事に集中できるのも妻のおかげです。子育ての大変な中、いつも前向きに取り組んでくれています。料理も得意なんですよ」

と康平さんは照れくさそうに笑った。

「親子で共に光に向かう、温かい家庭を築きたい」と夫婦笑顔で語っている。

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