親鸞会 家族で聞きたい

"とっても幸せ"シニアライフ

近畿 松本君枝さん

 市営住宅で独り暮らしの松本君枝さん(73)だが、寂しそうな様子は少しもない。
「お金も家族も、何にもないけど幸せいっぱい」
と、屈託なく笑う。
 毎月、自室で家庭法話を開けば、仏法讃嘆の声が満ちるからだ。

 朝、松本さんはチラシの束を抱え、市営団地の郵便受けを巡る。近隣の文化会館で開催される仏教講座を案内するためだ。朝刊を取りに来た人に出会えば、
「おはようございます。これ、読んでね」。

 チラシを見て、近くの会場に参詣された人を、さらに、自分の部屋での法話に誘っているという。

「私のように幸せな人が、一人でも多く現れてほしいと思って。親鸞聖人の教えに出遇って、生き返ったんや」

親鸞会.net 20歳で結婚してから、苦労の連続だった。最初の夫は遊び人で、パチンコに明け暮れた。君枝さんは深夜まで働き、舅・姑まで養ったという。疲れ果てた7年後に離婚してから、独身で通していたが、平成の初め、とび職の響さんと再婚。無口だが、職人気質の誠実な人だった。やっと訪れた平穏な生活。しかし、それも2年前、響さんの他界で崩れ去る。

 心にぽかんと穴が開いた。部屋の片隅で独り、テーブルにもたれ、一日中、外を眺めた。いつも隣に寝ていた夫のいない寂しさに、布団に顔をうずめて泣きもした。

 2週間が過ぎたころ、ポストに仏教講演会のチラシが届く。"親鸞聖人"の文字に、母と寺に通った娘時代を懐かしんで参詣した松本さんは、驚いた。
 人生は難度海とおっしゃる聖人のお言葉は、自分の人生そのもの。そして、それら苦悩の根元を解決した、光明輝く世界があるとは―――。
「何としても、弥陀の大船に乗せていただきたい」
 親鸞会館へ聞法に出掛けるようになった数カ月後、法友の家庭法話に参詣し、
「私も法話を開いて、同じ団地の人に伝えよう」
と思い立つ。

 参詣した法友の家は、広々とした邸宅だった。松本さんは団地の一室。仏壇は小さく、大型テレビもない。しかし、迷いはなかった。
「末代の宝を受け取らせていただくんや。一人で喜んでいては、もったいない。仏法伝えて、白い目で見る人があっても、問題にならんわ」

 早速、親鸞会の講師を招待し、6畳の和室とリビングルームの半分を使い、ご法話が開かれた。仏縁を結んで、5カ月目である。

 当初、同じ団地から、4人が集まった。
 一つ上の階の柳原さんは、家庭法話の"常連"。法話以外の日にも、松本さんの部屋へ話を聞きにくるようになり、親鸞会館の報恩講に参詣を果たした。

 車で10分の距離に住む敷島さんは、
「松本さんに刺激されて、私も家庭法話を始めたんですよ。近所の人が寄ってこられるって、うれしいものですね」
とほほえむ。

 この1月、しばらく法話に姿を見せなかった団地の友人が、「また、聞きたくなった」と、松本さんに電話してきたという。

「仏法は大宇宙一の宝なのに、皆、なかなかもろうてくれへん。やっぱり種まきやね。親鸞会館に、この団地からもっと参詣される方が出てもらいたいですね」
と、松本さんは声を弾ませ、明朝配る案内チラシの準備にかかった。

(プライバシー保護のため、仮名にしてあります)

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